終末期における意思表示2

人は、亡くなる前に、以前まで出来ていた事ができなくなっていくことがある。

病気が原因であれば、なおさらだ。

 

現代では2人に1人が発症すると言われる認知症になると、例えばこんな事が出来ない。

・現金を他人のために使う事

家族にも渡せないので、妻の医療費だろうが、子供や孫の結婚資金だろうが、自分の為以外に使う事が出来ない。

 

・家をリフォームする

直すことは出来るが、リフォームはダメ

 

・不動産の売却や賃貸契約などをする

借りることも貸すことも売ることも買うことも不可能

 

・遺言を書いても無効になる

あらゆる意思表示が、法的に無効になる。

 

こうなった場合、親族が助けることも多いが、「法定後見」制度により弁護士や司法書士がお金の引き出しなどをサポートすることもよくあるケースである。

彼らは報酬を受け取るが、他人の財産を管理するということで、高い倫理観が求められる(着服など、訴訟が起きることもしばしば)

また、後見が必要な状態になるまでは自己管理、自己責任となり、後見が必要かどうかは家庭裁判所の判断となるため、自分や家族が望んだタイミングという訳にはいかない。

 

財産に関しては、自分が意識をはっきりとしているうちに準備する方法は以下の通り。

 

1.民事信託(家族信託)を活用

自分が所有しているモノやお金に関わる判断の権利を、誰かに託し、自分が利益を享受する仕組みである。

受託者は家族がなることが多いが、利益は委託者本人のもの、納税義務なども委託者本人の責任となるため、贈与税などを払う必要はない。

信頼できる家族に、家や株、現金の使い道を契約で決めておけば、妻や夫の為に活用することも、売買契約を結ぶことや資産運用も可能である。また、自分の死後には第二受益者を決めておくことが出来るため、死後においても委託者本人の意思を尊重した配分が可能である。

知名度がまだ低いが、初期費用がかかる事を除くと利便性が高いサービスといえる。

 

2.任意後見

家族信託は契約後すぐに適応されるが、自分が認知症などになった時に、家族など信頼できる個人が後見人となる仕組みである。民事信託よりは初期費用が掛からず、家族が後見するという安心感がある。

ただ、積極的な運用や他の家族に財産を交付する事などは基本的には認められず、後見監督人に認められた行為のみの後見となる。

 

3.遺言

自分の死後、財産の分割に関して意思表示する仕組みである。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがある。財産の全部に関してだけではなく、一部の財産のみ指示することもできる。

書き方に細かい規定があり、自筆の場合は全て自書しなくてはならなかったり、見つけられない事もあり、作成の際には注意が必要である。

ちなみに、付言事項というメッセージを同封する事が出来、残された家族にとっては非常に重要な側面を持つ。こちらは言わば想いの遺言である。生前の感謝や、兄弟仲良くしなさいとか、遺骨の処分方法などなんでも書いてよい。

 

4.エンディングノート

法的な拘束力などは無いが、言わば自分の終末期におけるさまざまなメッセージを残しておく事を言う。好きなノートやパソコンなどに、自分が重い病になったら、家族が確認してほしい内容などを記しておく。

主に終末期医療に関してしてほしいこと、最後に●●に連れて行ってほしいなどの旨、生命保険証券や預金のありか、葬式やお墓などの指示、危篤に際して連絡してほしい人などである。

無論形式は自由だが、見つけてもらう必要があるため、存在を家族に知ってもらう工夫が必要である。

 

他にも方法がないわけではないが、法律により、終末期に財産が縛られてしまうケースはよくあるので、暗い話題であるからこそ、元気なうちに慎重に準備をしておく事が望ましい。

 

日本は一般市民の制度への理解があまり進んでいないため、親や自分の最期のあり方も自分で決められない事が多い。

文化として、尊厳を持った最期を迎えるということが根付くといいと願う。